是正勧告書、指導票、是正報告書とは?
<是正勧告書>
労働基準監督官が事業場に対し臨検監督等を行った際に,労働関係法令違反があった
と認めたとき、その違反事項を是正すべき旨を記して当該会社に対して交付する文書で
す。監督官は事業主又は立会人に該当事項を説明し、受領者は受領年月日、サイン・押
印をすることになります。是正勧告書には違反事項と是正期日が指定されていますので
期日までに是正する必要があります。
是正勧告書自体はあくまで勧告であり、事業主の主体的な是正措置を期待するもので
すから強制力は持っていませんが、重大な法令違反や悪質なもの、再三の勧告にも改善
の意思がみられないものについては、送検処分されることがあります。
【参考】札幌労基監督官(共永交通)事件 H2.11.06 札幌地裁判決
労働基準監督官の発する是正勧告というのは、一般に労働基準監督行政を実施した際
に発見した法違反に対する行政指導上の措置に止まるもので、何らの法的効果をも生ず
るものではないと解されている。すなわち、是正勧告は、これにより法違反の状態を当
然に変更するものではなく、また勧告を遵守しない使用者に対し、罰則を科するとか、
その他これの遵守を強制する制度も設けられておらず、あくまで、勧告を受けた使用者
が自主的に勧告にしたがった是正をするのを期待するものに過ぎない。使用者は、勧告
に従った是正をしなかったとしても、その法的地位に何らの影響も受けないのである。
なお、原告主張の本件是正勧告の内容からして、本件是正勧告も右の意味での是正勧
告といえる。ところで、行政事件訴訟法三条二項の抗告訴訟の対象たる処分とは、当該
措置がそれ自体において直接の法的効果を生ずる行為、すなわち、直接に国民の権利自
由に対する侵害の可能性のある行為に限られると解される。したがって、何らの法的効
果も生じない本件是正勧告が抗告訴訟の対象とならないことは明らかである。
〔中略〕しかしながら、労働基準監督官が検察官に事件を送致するのは、使用者が是
正勧告に従わなかったという事実に基づくのではなく、使用者に労働基準法違反が存す
るという嫌疑に基づくのである。また、労働基準法違反の事実の態様、労働基準監督官
の抱く嫌疑の程度によっては、是正勧告を発せずに直ちに検察官に事件を送致すること
もあれば、是正勧告を発しても事件を検察官に送致しないこともある。さらに、送致さ
れた事件が当然に起訴されるわけでもない。
〔後略〕
<指導票>
労働基準監督官が会社に対し臨検監督等を行った際に,労働関係法令違反ではないも
のの改善を図らせる必要のある事項があった場合に,その事項を改善すべき旨記して当
該会社に対して交付する文書です。また、法令違反に該当することになる恐れがあると
きも交付されることがあります。
<是正報告書>
指導票や是正勧告所に記載された事項について,事業主が労働基準監督機関に対して
是正・改善状況を報告するために提出する文書です。是正報告書には会社の名称,代表
者職氏名等の属性に関する事項,会社の違反法条項,是正内容、是正完了年月日等を記
載して提出します。必要に応じて添付書類が必要な場合があります。
⇒是正勧告を受けやすい事項は? |