労働基監督署が行う臨検監督・是正勧告の解説ページです。
その際、最も重視されるサービス残業についても解説します。

竹林社会保険労務士事務所/広島市安芸区

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タイムカード管理の弊害2

 ワンポイントチェック
ホワイトカラーに合わないタイムカード管理。
終業時刻間際になって「残業するほどではないけど、ここまで片付けておきたい」といったことは、ホワイトカラーの仕事のやり方では良くあることです。しかし、それで5分間労働時間が長引いても残業になるのです。しかし、タイムレコーダーと給与計算ソフトを連動させている会社では、おいそれとタイムカードを廃止することはできません。頭の痛い問題です。
 

是正勧告を受けないためのサービス残業対策


  働き方の改善を避けてサービス残業問題をクリアすることは難しいのですが、それに
は時間がかかります。そこで、簡単にサービス残業を削減できる方法をいくつかご紹介
します。

@休憩時間を延長し、始業・就業前の時間を労働時間に算入する。
 例えば1日の労働時間が8時間で休憩時間が1時間の勤務だったとき、朝礼や終礼を
就業時間外に行っていませんか?この朝礼や終礼が大事な業務の伝達事項を伝えるもの
で強制されている場合は、監督者の指揮命令下にあるとして労働時間とみなされます。
このようなときには(もしそれぞれ5分かかるとすれば)休憩時間を10分延長し、始
業時刻を5分早め、終業時刻を5分遅らせることで対応できます。制服の着用を義務付
けれれているときも、着替え時間が労働時間とされることがありますので、そのときも
同様です。なお、このとき拘束時間が10分増えますので労働条件の不利益変更ととら
れる可能性が全くないとは言えません。個別同意までは必要ありませんが、しっかりと
主旨を説明し、労働者代表の意見は聴いておいてください。


Aタイムカードは出退勤時刻管理でなく、始業・終業時刻管理とする。
 タイムレコーダーの設置場所には、気をつけてください。厚労省が求めているのは始
業・終業時刻の管理であって、出退勤時刻の管理ではありません。私がサラリーマンを
していた頃、勤務シフトより1時間以上早く出勤し休憩室でタバコを吸っていることが
多くありましたが、もし社員通用口にタイムレコーダーを設置していれば、たとえ労働
していなくても、労働時間を証明するものはタイムカードしかありませんから、監督署
の臨検があれば私のように遊んでいる時間も労働時間とされる可能性は非常に高くなり
ます。ですから、タイムカードは社員通用口に設置するのでなく作業場前に設置し、仕
事が始まる直前と仕事が終わった直後に押すようにさせてください。仮にこの差が1日
10分としても1ヶ月21日勤務では210分ですから3時間30分のサービス残業を
削減することができます。なお、出社時刻や退社時刻で遅刻・早退を管理していれば、
間違いなくその時間が始業・終業時刻とみなされますので注意が必要です。
千里山生活協同組合事件 1999年05月31日大阪地
「タイムレコーダーは、その名義の本人が作動させた場合には、タイムカードに打刻された時刻にその職員が所在したといいうるのであり、通常、その記載が職員の出勤・退勤時刻を表示するものである。そこで、特段の事情がないかぎり、タイムカードの記載する時刻をもって出勤・退勤の時刻と推認することができるもので、本件においても、右認定のとおり、これによって労働時間の管理がされ、タイムレコーダーの管理も全く杜撰であったとはいえない以上は、個々の原告らについて特段の事情の有無を検討することになるものの、原則として、これによって時間外労働時間を算定するのが合理的である。もちろん、タイムカードの記載は、職員の出勤・退勤時刻を明らかにするもので、右時刻が、職員の就労の始期・終期と完全に一致するものではないが、〔中略〕タイムカードを打刻すべき時刻について特段の取決めがなされたとの事情の窺えない本件においては、タイムカードに記載された出勤・退勤時刻と就労の始期・終期との間に齟齬があることが証明されないかぎり、タイムカードに記載された出勤・退勤時刻をもって実労働時間を認定するべきである。

なお、始業・終業管理だけでなく、勤務終了後も居残って雑談をしている者がいる場合
は、帰宅を促してください。
   
※制服着用を「労務の提供に必要不可欠な行為は、それが本来の職務を行うための準備行為であり、使用者の指揮命令下にある」とした(三菱重工長崎造船所事件・H1.2.10 長崎地裁)と、「労働力提供のための準備行為であって、労働力の提供そのものではないのみならず、特段の事情のない限り使用者の直接の支配下においてなされるわけではない」とした(日野自動車事件・S56.7.16東京高裁)の相反する判例がありますが、現在では前者のほうが有力のようです。



B給与の表示方法を残業代込みとする。
 事業主が、従業員の基本給や営業手当の中には残業代がすでに含まれていると言って
もそれを証明できなければ、その論拠は成り立ちません。判例でも、給与や手当のうち
どの部分が割増賃金に該当するかを明確に区分できないときは割増賃金支払い義務を免
れないとしています(小里機材事件 1989.1.30東京地)。これは歩合給制にしても同じ
です(高知県観光事件 H6.6.13最高裁第二小)。逆に言えばそれが明確になっていれば
現在の給与を残業込みだと言うことができます。ただし以下について注意が必要です。

・従業員の個別同意を得ること。

・給与、手当のどちらに組み込むにしても、何時間分の時間外労働が含まれるかを明確
 にすること。

・最低賃金を下回っていないこと。

・みなし残業時間を超えたときは割増賃金を支払う旨、就業規則等に記載があること
このやり方は一種の賃下げと同じ(時間単価を下げることになります)ことですから、
労働条件の不利益変更になる可能性があります。従業員の個別同意を得られない限り、
導入は難しいと考えてください。なお、残業込み賃金を簡単に設計できるソフトをエク
セルで作成していますので、必要な方はご利用ください。



C就業規則を変更する。(上記@ABも就業規則の改訂が必要です。)
 上司が始業・終業時刻をチェックしているような会社では、始業時刻には作業場に入
りいつでも仕事を開始できる体制を整えておく旨、就業規則に定めることも大切です。
この定めがないときは、どの状態をもって出勤時刻とするのかが明確になっていないた
め、労働者に有利な時刻(出社時刻)で計算される可能性があります。



D出勤簿を印鑑方式にする。

 このやり方は正直言ってあまりお勧めできません。それは今後厚労省のサービス残業
対策として夜間臨検が増えてくると思いますが、始業・終業時刻を証明するものが何も
ないのですから、18時終業となっている企業に20時に臨検したとき大部分の者が働いて
いれば、たまたま忙しいときであったとしても、それを元に痛いところを突かれること
は十分考えられますし、労働者に対し直接調査をされることも十分考えられます。また
「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」を守っていない
ということで2年間遡って不払い賃金を支払わされる可能性が高くなるのではと思うの
は杞憂でしょうか?(現在は悪質でないものについては3ヶ月遡及が多いようですが、
最大2年間遡ることができます。)なお判例では東久商事事件1998年12月25日大阪地

「被告会社にはタイムカードその他従業員の出退勤時間を管理するものはなく、被告Yも通常夕方には会社を出て営業活動に出かけるためその後の従業員の勤務状況を知る立場になかったことが明らかであるから、被告Yが、従業員の残業の実態を把握していたとは到底認められない。また、被告Yは、従業員に対し午後六時には帰るように指示していたと供述するが、従業員の残業を禁じた形跡は認められないのであって、むしろ、被告Yの息子が原告が午後八時ころまで残っているのを目撃したことがあったことは被告Y自身認めているところであるし、ファックス送信時間の記録を見ても、午後七時半ころに被告会社と取引先との間でファックスのやりとりが行われていたことが認められるのであって、被告会社において残業が行われていなかったとは到底いいがたい。
 もっとも、原告が相当時間残業していたことが認められるものの、原告がその時間数を示すものとして提出するのは、原告が退職後に作成した(書証略)のみであって、正確な時間を認定するに足りる客観的な証拠は存在しない。しかしながら、〔中略〕被告会社が従業員の出退勤の管理をしていなかったことを考慮すると、ある程度平均化された大雑把な捉え方になるのもやむを得ないところである。また、そもそも、正確な労働時間数が不明であるのは、出退勤を管理していなかった被告会社の責任であるともいえるのであるから、正確な残業時間が不明であるからといって原告の時間外割増賃金の請求を棄却するのは相当でない。これらの事情を考慮すると、本件では、(書証略)に記載された時間原告が残業したものとして、割増賃金額を算定するのが相当である。」
と、時間外労働の時間数を正確に計算できないにも関わらず、原告の書証記載の時間残
業したものとして、割増賃金の支払が命ぜられた事例もあります。労働時間管理をして
いないからといって監督署の臨検や訴訟になったときに責任を免れるというものではあ
りません。



 仮に時間給2千円の労働者が毎月20時間サービス残業をしているとみなされたとき、
それを2年遡って支払うよう是正勧告を受ければ、
2,000円×1.25×20時間=5万円になります。それが2年間であれば120万円です。こ
れは一人あたりの額ですから、全従業員が対象になると相当大きな出費ですし、それを
計算するために、経理や総務担当者に余計な時間外労働をさせることになれば、無駄な
コストはどんどん増えていきます。

是正勧告対策、調査立会い、サービス残業削減などで、当事務所がお力になれることが
ございましたら、ご遠慮なくご相談ください。
⇒残業込み賃金設計ソフト

残業込み賃金にすれば割増賃金を払わなくて良いと勘違いされている方がおられます。賃金の中の残業相当分を越えたときは支払いが必要ですし、今の基本給を下げて残業相当分を入れることは労働条件の不利益変更になりかねませんので慎重な対応をお願いします。

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