賃金Q&A−残業代込み賃金の注意点−
Q 当社は毎月残業代が多く、人件費負担が大きくて困っております。先日、月々の賃
金の中に残業代を込みにすることができる方法があると聞きましたが、どのようにすれ
ばそんな制度を導入することができるのでしょうか?
A 残業代を賃金に込みにするといっても、残業代を払わなくてもよいというわけでは
ありません。表示方法が残業代を含むか含まないかということです。残業代を賃金に表
示すること=人件費コストを削減できるということではありません。
ただし、仮に月の時間外労働を20時間と見込んで、それを含む表示にしていれば、その
範囲内にとどまる限り、わずらわしい残業代の計算をしなくてすみますので、事務作業
の軽減には繋がります。ただしこの例では月の時間外労働の実績が10時間であっても、
約束した20時間分の賃金は払う必要があるため、その差額(本来払わなくも良い賃金)
は払いすぎになる点を考慮しなければなりません。
このように一定の残業時間を基本給や手当に込みとすることを『定額残業』といいま
すが、実際に導入するためには、次の要件を満たしていなければ成りません。
@通常の賃金部分と時間外・深夜割増賃金部分が明確に区別できること。
A込みとなる時間を超えるときは、不足分を支払うこと。
(徳島南海タクシー事件1999.12.14最高三小、小里機材事件1989.1.30東京地、他)
また、現在残業代を払っていなかったために、基本給や手当の一部または全部を残業
部分とするのであれば、時間単価が下がりますので、労働条件の不利益変更に当たりま
す。 労働条件の不利益変更には労働者の同意が必要ですが、とくに時間単価を下げる
といった大きな不利益変更は一人ひとりの同意(個別同意)が必要となりますし、不利
益変更の必要性と労働者が受ける不利益性のバランスの上で合法か違法かを判断します
ので、注意が必要です。もし本気でお考えのときは、社会保険労務士や弁護士の方に一
度ご相談ください。
⇒土日祝割増があるときの残業代
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