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労働契約Q&A−採用内定取消はどんなときにできるか−


 10月に今春大学を卒業予定の者の採用選考を行い、採用通知を発したところです
が、昨日、大口の取引先が倒産し、債権の回収について見込みがつかない状況です。売
り上げも激減していることから経営計画の練り直しを迫られており、その一つとして内
定者に対して内定取り消しをおこないたいと考えているところです。しかし、内定取り
消しは解雇に順ずるという話を聞いたこともあり、当社の状況でそれができるのか教え
てください。


A 内定取消は内定通知やその後の手続きが「労働契約の成立(始期付解約留保権付労
働契約)か、「採用予定(雇用契約の申し込みに対して、内部的に決定した段階にお
いて、その後の手続を円滑に進展させるため、便宜上、それを告知するためになされた
ものに過ぎない)かによって扱いは大きく変わってきます。「労働契約の成立」とな
れば、その後の内定取消は労基法上の解雇にあたりますので、「解雇は、客観的に合理
的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したも
のとして、無効とする。」(労基法18条の2)や解雇予告(労基法20条)、退職時等の証
明(労基法22条)、他が適用されます。また、判例でも

大日本印刷事件 1979年07月20日最高二小
採用内定の取消事由は、採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実であって、これを理由として採用内定を取消すことが解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認することができるものに限られると解するのが相当である。

インフォミックス事件 1997年10月31日東京地
始期付解約留保権付労働契約における留保解約権の行使(採用内定取消)は、解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ、社会通念上相当として是認することができるものに限られると解するのが相当である(最高裁昭和五四年七月二〇日第二小法廷判決・民集三三巻五号五八二頁参照。)。そして、採用内定者は、現実には就労していないものの、当該労働契約に拘束され、他に就職することができない地位に置かれているのであるから、企業が経営の悪化等を理由に留保解約権の行使(採用内定取消)をする場合には、いわゆる整理解雇の有効性の判断に関する四要素総合考慮のうえ、解約留保権の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ、社会通念上相当と是認することができるかどうかを判断すべきである。

 それでは、どの段階で「労働契約の成立」とみなされるのか判例を調べてみますと、

電電公社近畿電通局採用内定取消事件 1980年05月30日最高二小
被上告人から上告人に交付された本件採用通知には、採用の日、配置先、採用職種及び身分を具体的に明示しており、右採用通知のほかには労働契約締結のための特段の意思表示をすることが予定されていなかったと解することができるから、上告人が被上告人からの社員公募に応募したのは、労働契約の申込みであり、これに対する被上告人からの右採用通知は、右申込みに対する承諾であって、これにより、上告人と被上告人との間に、いわゆる採用内定の一態様として、労働契約の効力発生の始期を右採用通知に明示された昭和四五年四月一日とする労働契約が成立したと解するのが相当である。

大日本印刷事件 1979年07月20日最高二小
本件採用内定通知のほかには労働契約締結のための特段の意思表示をすることが予定されていなかったことを考慮するとき、上告人からの募集(申込みの誘引)に対し、被上告人が応募したのは、労働契約の申込みであり、これに対する上告人からの採用内定通知は、右申込みに対する承諾であって、被上告人の本件誓約書の提出とあいまって、これにより、被上告人と上告人との間に、被上告人の就労の始期を昭和四四年大学卒業直後とし、それまでの間、本件誓約書記載の五項目の採用内定取消事由に基づく解約権を留保した労働契約が成立したと解する。

このように、@入社日の通知をしたA勤務場所や身分など各種労働条件を提示したB研
修の案内をしたC誓約書など必要書類の提出を求めたDその他採用が確定した旨の意思
表示をしたなど、採用に向けた手続きを求めたときには、その意思表示が相手側に到達
した時点で「労働契約の成立」があったとみなされるようです。 他方「採用予定」であ
るときは、内定者とは労働契約を結んでいませんので、労基法の適用はありませんし、
これらの判例を気にすることもないと思われます。但し民法1条2項(信義則)違反、
ほかに基づく民事上の争いは十 分ありえますので、注意してください。採用内定通知が

単なる労働契約の予約として内定取消を認めた事件としては以下のものがあります。

東京都事件 1982年05月27日最高一小
以上の事実関係によれば、本件採用内定の通知は、単に採用発令の手続を支障なく行うための準備手続としてされる事実上の行為にすぎず、被上告人東京都と上告人との間で、上告人を東京都職員(地方公務員)として採用し、東京都職員としての地位を取得させることを目的とする確定的な意思表示ないしは始期付又は条件付採用行為と目すべきものではなく、したがって、右採用内定通知によっては、上告人が、直ちに又は昭和四六年四月一日から被上告人東京都の職員たる地位を取得するものではなく、また、被上告人東京都知事において上告人を職員として採用すべき法律上の義務を負うものでもなと解するのが相当である。

 最後に「労働契約の成立」を恐れるあまり、いたずらに決定を遅くさせることには疑
問も残ります。優秀な者であれば他社に流れていく可能性もありますし、以下のような
判例もありますので、ご注意ください。(取消が認められた例ですが)

桑畑電機事件 1976年07月10日大阪地
評価が主観的に分かれる事実が採用決定後に発覚した場合、企業が問題を否定的に評価し採用を取消すこともやむを得ないところといわなければならない。けだし、企業は、わが法制下においては広く人を雇入れるか否かの自由を有するのであり、採用するに当っては自己の危険と負担において採否の判断をするのであるから、応募者の資質適性に関する評価の自由は、それが特に公序良俗に反する等の事由がない限り、これを企業者に全面的に認めなければならない。〔中略〕採用取消事由が判明したにもかかわらず企業がいたずらに長らく放置し、採用予定者が学校を卒業したのちまたは卒業間際になって取消を通告するときは、卒業予定者は他へ就職する機会を奪われ一方的に過酷な結果を招来することがある。このような採用取消は、信義則上もはや許されないと解するのが相当であるが、本件についてこれをみるに・・・。
<お断り>

このページは判例を多数掲載していますので、縦スクロールを少なくするために、判例
部分は敢えてヨコケイを省略しています。見づらいと思いますがご容赦ください。

試用期間終了後の解雇は可能か


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